離婚について
最近、離婚のご相談にお見えになる方が増えています。これは、多くの法律事務所や弁護士会の法律相談でも言われております。財産分与や慰謝料は、離婚後の新生活を始めるに際しての基本となる財産です。養育費は、子どもが20歳になるまで、長期間に亘って受領するものです。離婚届に印鑑を押す前に、一度、弁護士を訪ねてみてください。1 離婚の方法
離婚をするための一般的な方法は、三つです。協議離婚・調停離婚・裁判離婚が、その方法です。以下、それぞれについて簡単に説明します。1.1 協議離婚
夫婦は、話し合いの上で互いに納得して離婚をすることが出来ます(民法763条)。このような離婚を、協議離婚といいます。裁判所の関与は無く、離婚の理由は問われません。この協議離婚により離婚する方が大半です。夫婦が離婚することに合意し、双方が署名した離婚届を役場に提出し、受理されたとき、離婚が成立します。なお、子がいる場合には、届けを提出する際に親権者を決める必要があります。最低限の手続はこれだけです。
この簡単さが、しばしば紛争の原因につながる事態を招きます。
協議離婚の場合、とにかく早く離婚したいということで、養育費・財産分与・慰謝料等の離婚条件について話し合うことなく離婚届を提出される例があります。養育費、財産分与、慰謝料等は、後から相手方に請求しても差し支えはありません。しかし、その範囲や金額が決まっていなければ、互いに合意することができない場合もあります。また、請求する時期が遅すぎれば、時効となる場合もあります。
このあたりについて込み入った紛争となってしまうと、多大な労力を費やすことになってしまいます。離婚届を提出する前に離婚条件についても十分に協議し、書面化しておくべきでしょう。書面化の際には、相手方の不履行に備えるために、相手方の同意を得て公正証書を作成しておくことをお勧めします。
1.2 調停離婚
夫婦間で離婚条件等につき折り合いがつかず離婚協議が成立しない場合には、家庭裁判所に離婚の調停を申立てることとなります。なお、後述の裁判離婚をするためには、原則としてこの調停手続を行う必要があります。これを調停前置主義といいます(家事審判法18条)。●場所
調停は、原則として、相手方住所地を管轄する家庭裁判所に申立てることとなります。例えば、相手方が既に埼玉県の自宅を離れて鹿児島の実家に帰っているような場合には、自分がどこに住んでいようと、鹿児島の家庭裁判所に申立てる必要があります。●効果
離婚調停も裁判所における手続です。しかし、一般的に裁判と呼ばれるものと同じではありません。後述の裁判離婚とは異なり、裁判所が強制的に離婚を成立させることはできません。協議離婚の場合と同じく、夫婦のお互いが合意しなければ、離婚は成立しません。●進行
調停では、男女1名ずつの調停委員計2名と共に離婚条件について合意に達するよう協議を進めていきます。調停委員という中立公平な第三者の関与のもと離婚条件等について冷静に話し合える機会が与えられるわけです。調停で合意に達した財産分与等の離婚条件については、調停調書が作成されることになります。この調停調書には確定判決と同等の効力があります。仮に相手方が支払を履行しなければ、調停調書をもとに、強制執行手続に着手できます。
1.3 裁判離婚
本人同士の話し合いや調停手続を進めても、相手方と離婚の合意に達することができない場合もあります。それでも夫婦の一方が離婚を望むならば、裁判所の判決に基づいて離婚するしかありません。この場合離婚訴訟を提起し、裁判所に判決で離婚を認めてもらうことになります。この方法を裁判離婚といいます。●場所
離婚訴訟を管轄する裁判所は、原則として、当事者(夫又は妻)の住所地を管轄する家庭裁判所です。実際には、先に離婚調停を取り扱った家庭裁判所にそのまま離婚訴訟が提起されることが多いです。●条件
裁判離婚は、いつでもできるわけではありません。私的な身分関係に国家が介入することは、制限されています。裁判離婚が可能なのは、以下の法定の離婚原因が認められる場合だけです(民法770条1項)。また、前述のとおり、原則としてまずは調停を経なければ、離婚訴訟を提起することは出来ません。
民法第770条1項 (裁判上の離婚) 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。 | ||
一号 | 配偶者に不貞な行為があったとき | |
二号 | 配偶者から悪意で遺棄されたとき | |
三号 | 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき | |
四号 | 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき | |
五号 | その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき | |
(第2項略) |
2 離婚する際に決めておくべきこと
離婚の際には、離婚条件を定める必要があります。以下の事項について、夫婦間で協議しておくべきです。2.1 財産分与
離婚をした者の一方は、他方に対して、財産の分与を請求することが出来ます(民法768条1項・771条)。具体的な金額は、当事者間の協議で決めて構いません。協議が整わないときは、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求できます。この請求があれば、これに基づいて審判がなされます。一般的には、離婚調停を申立てる際に、財産分与の請求を併せて行うことになります。
財産分与は、基本的には婚姻期間中に夫婦間で形成された共有財産を清算する趣旨のものです。したがって、婚姻期間前から所有している財産や、婚姻期間中に一方が相続により得た財産等(特有財産といいます。)は、対象に含まれません。
万一、財産分与について何も決めずに離婚をした場合には、離婚の時から2年以内に請求する必要があります。
2.2 慰謝料
離婚原因について相手方に有責行為がある場合に限り、慰謝料を得ることができます。離婚というと慰謝料を想像する方もおいでですが、常にこれが発生するわけではありません。慰謝料の本質は、不法行為による損害賠償請求です。このような性質である以上、夫婦のどちらか一方に主たる有責行為がある場合に限って慰謝料の請求が認められることになります。離婚に至る事情を一方の責任とは決められない場合には、慰謝料の請求が認められません。たとえば単なる価値観の相違や、性格の不一致などの場合が、これにあたります。
2.3 親権者
夫婦に未成年の子がある場合には、離婚の際に、親権者を決めることになります。裁判離婚の場合には、裁判所が父母の一方を親権者と定めます。この場合には、どちらが養育監護することが子の福祉にとって望ましいかを基準として、親権者となるべき者が定められます。なお、親権者と監護権者を分ける例もありますが、一般的ではありません。
2.4 養育費
親の一方が子を引き取り監護するとなれば、費用がかかります。その養育費を他方の親に請求することが可能です。金額については、対象となる子の年齢や双方の親の年収等を考慮して、子を引き取らない親が支払義務者として現実的に支払える金額の範囲内で決定されます。なお、養育費の額の目安として、裁判所が作成した養育費算定表があります。この表を参考にすることができます。なお、全ての事案についてこの算定表のとおりに決定される訳ではありません。
2.5 面接交渉
離婚により子の親権・監護権を有しなくなった実親が子どもに会うことを認める権利を、面接交渉権といいます。子の親権・監護権を有しなくとも子の親であることには変わりがなく、血縁に基づく自然権として認められるものです。面接交渉権は、実親としての権利とはいえ、無制限ではありません。最優先されるのは、子供の福祉です。面接交渉の具体的内容を定めるに際しては、子の福祉への配慮が優先します。そのため、面接交渉の実施が子の福祉にとって有害となると判断された場合には、一定期間その実施が認められないことや、その回数を減少させられることがあります。
3 婚姻費用分担請求
離婚が成立するまでの間の生活費についても、請求できる場合があります。たとえば、離婚前の夫婦が別居をすることがあります。別居中であっても法律上の婚姻が継続している以上、原則として、一方の別居中の生活費を他方に請求することができます(民法760条)。但し、婚姻の破綻・別居の原因が請求者側にある場合には請求が認められなかったり、減額されたりする場合もあります。
離婚協議が長引くことが予想される場合には、この婚姻費用分担請求の審判(または調停)を、離婚とは別に家庭裁判所に申立てることができます。
↑ページの上へ |